東京都美術館で開催されている「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展16世紀ネーデルラントの至宝 ーボスを越えてー」を見に行きました!
4月18日(火)に初日を迎えてから最初の週末だったので混雑覚悟で行きましたが、お昼時に行ったからか意外と混んでいなくて、待ち時間ゼロ、会場内も人で溢れかえっている訳ではなく、スムーズに鑑賞することができました。
Contents
展覧会の構成
本展の構成は以下のようになっていました。
Ⅰ. 16世紀ネーデルラントの彫刻
Ⅱ. 信仰に仕えて
Ⅲ. ホラント地方の美術
Ⅳ. 新たな画題へ
Ⅴ. 奇想の画家ヒエロニムス・ボス
Ⅵ. ボスのように描く
Ⅶ. ブリューゲルの版画
Ⅷ. 「バベルの塔へ」
バベルの塔展に行く前におさえておきたいポイント
① ネーデルラント絵画って?
本展覧会では、目玉となるボスとブリューゲルの作品だけでなく、数々のネーデルラント画家の作品を見ることができます。
まず、「ネーデルラント」とは何か。
ネーデルラント=Netherland=オランダと勝手に思っていたのですが、「ネーデルラント」とは「低地の国々」を指す言葉で、現在のベルギーとオランダがその国々にあたります。
その中核をなしたのが南部のフランデル地方で、国際貿易と毛織物工業を中心に経済発展したことで市民階級が生まれ、文化発祥の地となりました。その後これら地域はハプスブルク家により統治される等、ネーデルラント絵画のコレクターが変化していったのも特徴として挙げられます。
中世の絵画は、文字が読めない人にも分かるよう宗教画が主流でしたが、ネーデルラント絵画では、主題は宗教画であるものの、独自の解釈を見せ始めます。
展覧会の「Ⅳ. 新たな画題へ」にもありましたが、今までは「宗教」が主題だった絵画から、主題は「日常」(風俗画、風景画、静物画)だけれども、その日常の一部として「宗教」が描かれる、というように宗教画の姿が変化していったのもネーデルラント絵画の特徴です。
例えばこんな感じです↓
従来の宗教画であれば、ギリシャ神話に登場する神カローンがメインに描かれていましたが、この絵では風景がの中にいるカローンというように描かれています。
(引用:《ステュクス川を渡るカロン》(1515-1524、プラド美術館所蔵)Wikipediaヨアヒム・パティニール – Wikipedia)
また、何重も絵の具を重ねる技法がネーデルラント絵画の特徴だったのですが、その後、ネーデルラントの画家たちがイタリアに旅行しイタリア・ルネサンスの影響を受けたことから、さっとひと塗りするイタリア・ルネサンスの技法が取り入れられるようになっていきます。
② ヒエロニムス・ボスって誰?
ネーデルラント画家の巨匠の一人であるヒエロニムス・ボス(1450頃-1516)。
画題として「日常」を初めて描いたネーデルラント画家であると言われているそうです。
(引用:Wikipediaヒエロニムス・ボス – Wikipedia)
彼の特徴はなんといっても寓意的なモチーフとグロい魔物たち!
たくさんの情報が詰め込まれている絵を見て、「このモチーフは何を意味しているんだろう」、「うわ、こんなとこにこんな化け物!」、「こんな風に捉えるなんてすごい発想力だなー」とウォリーを探せの様に楽しめる個性的な絵画がボスの特徴で、とても人気の画家だったそう!独特な世界観からもシュルレアリスム的な要素が感じられます。
他の画家に与えた影響も大変大きく、多くの画家がボスの画法を真似し、ブリューゲルも影響を受けた画家の一人でした。
ボスの代表作であるこちらの《快楽の園》を見るためだけでもプラド美術館に行ってみたい。。!!
(引用:Wikipediaヒエロニムス・ボス – Wikipedia)
今年の12月には、ボスの没後500年を記念して、最も有名な《快楽の園》の謎に迫るドキュメンタリー映画「謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス」が日本でも公開されます!
よりボスについて知るための格好の材料になりそうですね!渋谷にあるイメージフォーラムという映画館で公開されるようです。
イメージフォーラム・ダゲレオ出版 – シアター・イメージフォーラム
Hieronymus Bosch: Touched by the Devil Official Trailer 1 (2016) – Documentary
③ ピーテル・ブリューゲルって誰?
今回の展覧会の目玉《バベルの塔》を描いたのがピーテル・ブリューゲル(1525頃-1569)。
(引用:Wikipediaピーテル・ブリューゲル – Wikipedia)
ブリューゲルは、「第2のボス」と呼ばれるほどボスの影響を大きく受けました。
ボスの 魔物たちの要素を受け継ぎつつも、ブリューゲルは主に農民の日常を描き、広大な風景の中に何人もの人・魔物を描くのが特徴でした。
また、ブリューゲルの絵画にはボス同様寓意的なモチームも含まれており、100程の諺を意味するモチーフが描き込まれた《ネーデルラントの諺》を描いています。国際貿易による発展が著しく進む中で、故郷のアイデンティティを絵画の中に閉じ込めたい想いがあったようですね。この絵画こそウォーリーを探せのように、諺を一つ一つ発見していったら楽しそうですね!
また、ブリューゲル家は5代にわたってネーデルラント画家として活躍しました。
《バベルの塔》を描いたピーテル・ブリューゲル1世の父、ヤン・ブリューゲル1世の花の作品は美術の教科書とかでも見たことがありますよね。すごい一家ですね!
(引用:《Flowers in the wooden vessel》Wikipediaヤン・ブリューゲル (父) – Wikipedia)
展覧会の見どころ
① マスコットキャラクター タラ夫
今回の展覧会の見どころはなんといってもこの「タラ夫」!!!
ボスやブリューゲルの絵に登場するきもかわ化け物たちを代表する、展覧会のマスコットキャラクターです。
すね毛が生えてるあたりがなんともいえない。。。このすね毛は本展覧会のオリジナルでつけられたものなのでしょうか。。笑
主催者の方々でマスコットキャラクターを決める際に、激しい議論が交わされたに違いありませんね。。。!!!
このタラ夫には、展覧会の出口で会うことができます。ぜひ一緒に写真をどうぞ!!
因みにタラ夫はtwitterもやっているようですので、こちらもぜひチェックを!
タラ夫@「バベルの塔」展公式 (@2017babel) on Twitter
② 初来日したボスの2作品は必見!
16世紀の宗教改革運動で偶像破壊の影響を受けてしまい、現存するボスの作品は約25点しかないそうなのですが、その内の2点が今回日本初来日しました!
「約」25点と言われているのは、修復等がされていて、本物かどうかの判断が難しいものもあるからなんだそうです。
その初来日となったのは以下の2作品です↓
どちらもぱっと見ただけでは正直「ふーん」という印象だったのですが、描かれているもののひとつひとつの意味をいざ知ると、作品のメッセージ性や物語が見えてきておもしろい!!謎解きのように、隠されたメッセージを探すのも楽しそうですね!
(引用:ヒエロニムス・ボス《放浪者(行商人)》(1500年頃))
(引用:ヒエロニムス・ボス《聖クリストフォロス》(1500年頃、ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館))
事前に公式HPで見所をチェックしたい方はこちら↓
③ 目玉はやっぱり《バベルの塔》!
「バベルの塔」と聞いて最初に思い出すのが、菊池凛子さんが出演している映画の「BABEL」というくらい、きちんとバベルの塔を理解していなかったのですが、本展覧会では解説もしっかりありとても勉強になりました!
【バベルの塔とは?】まず「バベルの塔」とは、旧約聖書の創世記11章に登場します。
当時、全ての地の人々は「同じ言葉を話す一つの民族」だったのですが、天まで届く塔を作って有名になり、人々が散り散りになってしまわぬよう目論んだのですが、神がそれを見て、ひとつの言語・ひとつの民族は神の存在を脅かすと感じ、人々をお互いの言葉を理解できなくさせ、また全地に散らせたと言われています。バベルの名前は、全地の言葉をバラル(混乱)したことに由来しているそうです。
※ 色々な解釈があるようですので、これはあくまでも一説です。
ブリューゲルのバベルの塔は実は2点あります!今回実物を見ることができる方は、オランダ ロッテルダムのボイスマンス=ファン・ブーニンゲン美術館に所蔵されていて、もう1点はウィーンの美術史美術館に所蔵されています。
本展で見ることができる《バベルの塔》はこちら↓
(引用:《バベルの塔》(1568、Museum Boijmans Van Beuningen, Rotterdam, the Netherlands)展覧会公式HPブリューゲル「バベルの塔」展|東京都美術館)
もう一つの《バベルの塔》はこちら↓
(引用:《バベルの塔》(1563, 美術史美術館)Wikipedia美術史美術館 – Wikipedia)
絵の大きさにも違いがあることから、オランダの方を「小バベル」、ウィーンの方を「大バベル」と呼んだりもするんだそうです。
確かに、本展で見ることができる《バベルの塔》は思っていたよりも小さく、塔の中の人まであまり詳細に見ることができないのですが、安心してください。東京藝術大学によって作成された拡大版の複製画も展示されているので、じっくり人まで見ることができますよ。
後ろで見ていたおじいちゃんも、「こんな大きい塔だったなんて、人の大きさと比べてみなくちゃ分からなかったよー」と言っていましたが、とても分かります。豆粒の様に小さい人々の姿を見て初めてこの塔がいかに大きいものかが分かりました!
朝日新聞による面白い記事にもありましたが、バベルの塔の高さは東京タワーとスカイツリーの間にもなるほどの高さで、他のビルの横幅と比べても、いかに大きい建築物であるかが分かります。
本展では東京藝術大学とのコラボで実現したバベルの塔の3D解説も見ることができますので、よりリアルに壮大さを感じることができますよ。
④コラボ企画が豊富!
もちろん展覧会だけでも十分楽しめますが、バベル展は様々な企画とコラボしていて、美術展を見た後もまだ楽しむことができるんです!
色んなコラボはこちらの公式サイトからチェックできます↓
プロジェクトBABEL|ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展 BABEL 16世紀ネーデルラントの至宝 ―ボスを超えて―
【ヒグチユウコさんのコラボ作品】
ネコでおなじみのヒグチユウコさん。幼い頃からボスやブリューゲルのファンだったそうで、今回のバベル展で展示されている13点の作品のオマージュ作品を新作の画集で見ることができます!
バベル展のお土産ショップでも画集が売っていましたが、数冊しか残っておらず、かなり人気のようでした!このオマージュ作品とかもヒグチユウコさんの個性が溢れていますよね!
(引用:公式Twitterヒグチユウコ★babel画集発売しました (@nekonoboris) on Twitter)
【バベルをケーキカットしたら?】
バベルの塔を大胆にケーキカットしちゃったのは、漫画家・映像監督の大友克洋さん。大友さんもブリューゲルファンとのことで、今回ボイスマン美術館と意見交換をしてバベルの塔の内部、「INSIDE BABEL」の制作が実現しました!
しかも、その作品は無料で見れます!バベルの塔の展覧会会場の入り口に飾ってあるので、もう既にバベル展に行ってしまった方も、大友版バベルを観に行く価値ありですね!
(引用:Casabrutus.com驚異の想像力が生み出した《バベルの塔》を見に行こう! | カーサ ブルータス | ページ 2)
展覧会概要
・会期:2017年4月18日(火)〜7月2日(日)
・会場:東京都美術館 企画展示室
・開室時間:9:30〜17:30(金曜は20:00まで)
・休室日:月曜日
もっとボスとブリューゲルについて知りたかったら
ボイマンス・ファン・ベーニンゲン美術館
プラド美術館