三菱一号美術館で開催中の「オルセーのナビ派展」に行ってきました!
週末の閉館2時間前程に行きましたが、待ち時間ゼロで、館内もそこまで混雑しておらず、ゆっくり絵画の前に立って思う存分鑑賞することができました!
Contents
展覧会の構成
本展の構成は以下の通りで、ゴーギャンの作品からスタートし、彼に影響を受けた画家たちをテーマ別に見ることができ、ナビ派というジャンルを理解するのにも大変分かりやすい構成でした!
1. ゴーガンの革命
2. 庭の女性たち
3. 親密さの詩情
4. 心のうちの言葉
5. 子ども時代
6. 裏側の世界
ナビ派展に行く前におさえておきたいポイント
①ナビ派って何?
そもそもナビ派ってあんまり聞き慣れないですよね。私は、お恥ずかしながら何か聞いたことあるけどナビ派っていつの時代のジャンルかもぱっと出てきませんでした。。。
ナビ派は一言でいうと、ゴーギャンに影響を受けた画家たちによって結成された芸術グループ!
出たゴーギャン!!個人的に大好きな画家の一人で、ゴーギャンの意思を受け継いだ画家たちの作品と聞いただけでこれは絶対に見に行かなくてはと思いました笑
ゴーギャンの時代なので、モネやルノアールが代表するいわゆる印象派の後、後期印象派としてゴーギャン、セザンヌ、ゴッホ、スーラ等の画家が台頭した19世紀末頃にナビ派は生まれました。
ナビ派の特徴は、元祖ゴーギャンの特徴を知らずには語れない!
ということでまずはゴーギャンの特徴をおさえておきたいのですが、モネの睡蓮とかを見ても感じられるような「感覚的な印象」や「現実描写」を題材とした印象派が主流だった当時、ゴーギャンはこのスタイルに反して「総合主義」という新しいスタイルを確立します。
この総合主義では何を「総合」しているかと言うと、以下3点を総合しています。
1. 自然形態の外観
2. 主題に対する画家自らの感覚
3. 線・色彩・形態についての美学的な考察
(引用:現在美術用語辞典2.0総合主義:現代美術用語辞典|美術館・アート情報 artscape)
印象派との大きな違いは、視覚的に見える景色の印象をある意味現実描写する印象派に対して画家自らの感覚を表現する点と独自の美学に基づいた線・色彩・形態を使用する点でしょうか。
ゴーギャンの絵を見ると分かりますが、単純化された輪郭の中に鮮やかな色彩を平塗りするスタイルは印象派とは真逆をいっている気がするくらいのインパクトがありますよね。
印象派の作品と比べると、よりそのスタイルの違いがよく分かります。↓
(引用:《モネ夫人と息子》(1874)Wikipediaピエール=オーギュスト・ルノワール – Wikipedia)
(引用:《タヒチの女(浜辺にて)》(1891)Wikipediaポール・ゴーギャン – Wikipedia)
話は戻ってナビ派ですが、ナビ派の画家たちはそんなゴーギャンの美学に影響を受けつつも、自分たちをヘブライ語で予言者(ナビ)と呼び新しい芸術スタイルを模索しました。ゴッホ等の画家も集まったポン・タヴェンでゴーギャンに出会ったポール・セリュジがゴーギャンのスタイルを学び、パリに戻ってから友人に伝えたことから前衛的なナビ派は形成されました。
ナビ派の絵画の特徴は、本展では以下4点として紹介されています。↓
1. 象徴主義
2. 平面性と装飾性
3. 日常的主題
4. 神秘的主題
個人的には、ナビ派では総合主義の「線・色彩・形態についての美学的な考察」の面が強く、より装飾的な要素が取り入れられたように感じています。
ゴーギャンがタヒチでの原始的な生活で創作活動をしたのに対して、ナビ派の画家たちは油絵・版画・ポスター・家具・舞台装置等、幅広い分野で活躍し、アール・ヌーヴォーとも深く関係していたと言われています。
②ナビ派を代表する画家
そんなナビ派を代表する画家には誰がいるのでしょうか?
本展でも「ナビ派の誰派?」企画がされており、こちら↓からも代表的な画家を見ることができますが、個人的に気になる3人をここではピックアップしてみたいと思います。
#ナビ派の誰派?Twitter連動スペシャルコンテンツオルセーのナビ派展:美の預言者たち ―ささやきとざわめき|三菱一号館美術館(東京・丸の内)
【モーリス・ドニ(1870-1943)】
ナビ派結成時のメンバーであるドニは理論派で、独自の絵画理論を展開しています。
どこかナビ派の作品が装飾性を感じられるのは以下の様な本質を持つからでしょうか。
「絵画が、軍馬や裸婦や何らかの逸話である以前に、本質的に、ある順序で集められた色彩で覆われた平坦な表面であることを、思い起こすべきである」
「美しきイコン(聖像)のナビ」と呼ばれるドニの作品の主な主題は宗教でしたが、風景がや母と子の人物画も描いています。
こちらの作品は、本展でも見ることができます。↓
(引用:《ミューズたち》(1893)MUSEYモーリス・ドニによる絵画作品の一覧|MUSEY[ミュージー])
彼の美術館もありました↓
モーリス・ドニ美術館(フランス)モーリス・ドニ美術館
【ピエール・ボナール(1867-1947)】
ボナールもナビ派結成時のメンバーの一人です。別名「日本かぶれのナビ」と言われ、日本美術愛の強いボナールが浮世絵の影響を受けたのが分かる作品を本展でも見ることができます!
ボナールはアンティミストの代表画家でもあり、室内情景等の身近な題材が主題です。
展覧会のポスターにもなっているこのピンクの格子柄の服を着た女性を描いたのもボナールです。
(引用:《格子柄ブラウス》(1892)展覧会公式HPピエール・ボナール|オルセーのナビ派展)
個人的にジャポニズムが大好きなので、「ボナールとジャポニズム展」とかいつかやって欲しいです。。!!
【フェリックス・ヴァロットン(1865-1925)】
そして外せないのがヴァロットンです!三菱美術一号館と言えばヴァロットン、というイメージが私の中でつく程、ヴァロットン展を去年?見に行った時の衝撃は今でも覚えています。
昨冬パリを沸かせた謎の画家、ヴァロットン展が日本へ。 | News&Topics | Pen Online
どこか冷たい空気が流れている彼の絵に不思議と引き込まれてしまいゾッとするような感覚を味わって鑑賞をしていたのですが、その中でも圧巻だったのはなんといっても版画でした!
白黒だけで平面で装飾性があり、そういう意味でもナビ派っぽさを感じられるヴァロットンの版画はおしゃれで飾りたくなるものの、他の絵画と同じくゾッとするような冷たさ・事件性を感じるものが多く、見れば見るほど色んな物語が見えるようで不思議な気分にさせられました。
こちらは本展でも見ることができます。やはり何か不穏な空気を感じますね。。↓
(引用:《ボール》(1899)pen onlinehttp://www.pen-online.jp/news/art/vallotton_exhibition/)
ヴァロットンの版画の絵はがきは常設のお土産ショップにも置いてありますので、ぜひチェックしてみてください!
展覧会の見所
①日本初のナビ派展
ナビ派と聞いてピンとこないのも納得、日本で本格的に「ナビ派」の枠でジャンルとして紹介されるのは本展覧会が初めてなのです!
印象派のイメージが強かったフランスのオルセー美術館ですが、ナビ派の研究もしていたコジュヴァル館長が就任をしてからはナビ派の作品を多数購入するようになり、その館長と三菱美術一号館の高橋館長が知り合いということから、本展覧会が実現したようです。こう考えると館長が美術館に与える影響って相当大きいですよね!
面白い展覧会でもっとナビ派の画家について知りたくなったので、今後は画家一人一人に絞った展覧会も開催されないかなーと期待しています!
② 絵画以外のナビ派作品もあります!
ナビ派は絵画以外の幅広い分野で活躍したと紹介をしましたが、本展覧会でも所謂絵画以外の版画・タペストリー・屏風等といったナビ派の作品も見ることができます!
このような作品を見ると、ナビ派の作品がいかに生活に取り入れられていたかが伺えますね。(版画は本の挿絵となり一般の方の目に触れることが多かったものの、タスペリーや屏風等は裕福な家庭でないとオーダーはできなかったでしょうが。。)
本展覧会でも数点ヴァロットンの版画を見ることができます。
(引用:《La Raison Probante》(1897)Wikipediaフェリックス・ヴァロットン – Wikipedia)
③ジャポニズム要素探しが面白い!
ピエール・ボナールが日本かぶれのナビ派と呼ばれていましたが、ナビ派の作品は平面なことから、平面が特徴の浮世絵等との共通点探しも楽しめる展覧会です!
やはり特にボナールの作品は浮世絵の影響が強く出ており、浮世絵愛が溢れ出している作品を見るとにやにやしてしまうと同時に、色合いや装飾性、構図等がとても美しく、家に飾りたい。。!という気分にさせられました。
特にこちらの連作が圧巻だったのですが、色合いだったり背景の模様、服の模様、装飾的な曲線等、ナビ派要素と浮世絵要素のどちらも感じられる作品ですね。
(引用:展覧会公式HP本展の見どころ|オルセーのナビ派展:美の預言者たち ―ささやきとざわめき|三菱一号館美術館(東京・丸の内))
まとめ
ナビ派のジャンルをメインとした初めての展覧会で、ナビ派の勉強にはうってつけでした!ますます知りたいという気持ちにさせられる新鮮な気持ちになる展覧会でしたので、ぜひ足を運んでみてください!
展覧会概要
・会場:三菱一号館美術館(〒100-0005 東京都千代田区丸の内2-6-2)
・会期:2017年2月4日(土)~5月21日(日)
・開館時間 10:00~18:00
(祝日を除く金曜、第2水曜、会期最終週平日は20:00まで)
・休館日:月曜休館(5月1日、15日は開館)
・入館料:一般1,700円(前売り1,500円)